能登半島地震で被災した能登空港(石川県輪島市)で27日、旅客便の運航が再開した。被災した家族に会うため、ボランティアに向かうため――。様々な思いを持つ人たちを乗せ、東京・羽田空港から能登半島に降り立った。
午前11時20分ごろ、全日本空輸(ANA)のボーイング機が能登空港に着いた。
乗客は62人。到着ゲートから出てきた千葉市の香林(こうりん)相子さん(49)は、能登町の実家に住む両親と発災後初めて顔を合わせた。「空港が再開したらすぐに行こうと思っていた。顔を見て安心した」と話す。
実家は倒壊を免れたものの、多くの家具が倒れる被害を受けた。母の数馬明子さん(77)は「娘に会えてうれしい」と目に涙を浮かべた。
東日本大震災を経験した福島県須賀川市の杉田久美子さん(69)は、空港再開の報を知ってすぐに申し込んだ。能登町に住む弟夫婦が心配だった。「早く自分の目で顔を見たい」と話した。
東京都大田区の須藤英児さん(55)は、知人の見舞いと炊き出しボランティアの手伝いにやってきた。「映像を見るとつらかった。細く長く支援を続けたい」と話し、珠洲市に向かった。
午後1時50分の出発便を待っていたのは、穴水町の原栄子さん(84)だ。1人で暮らす自宅に大きな被害はなかったが、「自宅にいると地震の揺れで、落ち着かないし生きた心地がしなかった」。東京都八王子市に住む長女のところに身を寄せるという。
能登空港は2千メートルの滑走路が1本あるが、地震で数カ所に亀裂が入り使えなくなった。11日に仮復旧されたが、支援物資や2次避難者を運ぶ自衛隊の輸送機などに利用が限られていた。ターミナル内は災害復旧にあたる関係団体が拠点とし、十数人が避難している。
定期便は羽田―能登の1日2往復だったが、この日は臨時便として1往復が運航された。来月29日まで火木土の週3回、1日1往復の臨時便が運航される。空港周辺の道路は完全に復旧しておらず、空港の交通アクセスが限られているため、県などは事前に交通手段を確保するよう呼びかけている。(松永和彦)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル